雇用流動化についての私なりのまとめ
日本企業が復活するためには、労働の流動化は必須というエントリーを、前回の記事でコメントをいただいたLilacさんが書かれたので、私も雇用流動化についてちょっとまとめてみようと思います。ちょっと長いですが、そこはご了承ください。
私の場合、雇用流動化には賛成の立場を取っていますが、賛成する理由は企業経営上必要というよりも、雇用される立場の公平性を考えた上で、流動化した方が良いと思っているのです。
私の場合、雇用流動化には賛成の立場を取っていますが、賛成する理由は企業経営上必要というよりも、雇用される立場の公平性を考えた上で、流動化した方が良いと思っているのです。
雇用流動化と言うのは簡単に言えば今の日本の雇用・就職制度の逆をやるということです。つまり、
・新卒一括採用⇒通年採用
・年功序列、正規・非正規身分制度⇒成果主義、同一労働・同一賃金
・終身雇用⇒定年制の廃止
と言ったところでしょうか。これらが行われるだけでも、雇用に関する公平性はかなり変わります。
例えば新卒一括採用について、今年・昨年のように景気が悪いときに就職時期が来た学生は確実に就職窓口が狭くなり、就職浪人したり既卒になったりフリーターになったりせざるを得ないのが現状です。しかし、これが通年採用になれば、景気の良し悪しに限らず自分のキャリアをスタートすることができます。景気が悪いときはインターンシップや資格勉強、修士を取るなどに時間を費やし、景気が良くなれば就職すればよいということになり、卒業年度に関わらず就職の窓口が広がります。
また、年功序列の廃止も急務です。私は元々大企業商社の子会社にいたわけですが、ここも年功序列の弊害を受けていました。本社は年功序列が基本でしたから、課長級の50代中盤〜後半がわんさかいました。当然、上に上がる部長はその課長級数十人のうち1人ですから、ほとんどは課長もしくは課長代理止まりです。年功序列の日本企業では、彼らが現役で働き続ける限り、40代・30代の社員は課長にはなれません。良くて主任や課長代理です。
そこで大企業本社は彼ら50代中盤〜後半の課長級を子会社に転籍させることにしました。すると給与体系も変わるので、人件費のカットもできますし、本社にはポストが空きます(と言っても、そのままのポストが空くと言うより、整理された少ないポストが空くのが現実です)。これで本社の30代・40代の社員は晴れて課長に昇進できるようになりました。
ところがです。困ったことが起きたのです。そう、子会社の社員が出世できない状況がこれによって出来上がったわけです。子会社の社員である限り、本社からの転籍組(簡単に言えば天下りです)が上のポストを奪っていってしまい、出世できないことになったのです。つまり、この本社から子会社を作ってそちらに転籍させると言う措置は、大企業本社にとっては人員整理になり、若い社員が目を出しますが、その代わりに子会社社員の芽をつぶすことになるのです。
年功序列企業では必ずしわ寄せを受ける層が出てきます。そのしわ寄せは若い社員と下請け・子会社社員にまわされています。雇用流動化が起これば、50代中盤〜後半の課長級はおそらく解雇されていたでしょう。しかし、雇用流動化が進んでいるために、彼らもすぐに職を得ることができたと思います。ただ、当然ながら年功序列で積み上げた給与よりもだいぶやすくなるのは間違いありません(これが、中高年が流動化に反対する理由になるでしょう)。
というように、私の流動化賛成論というのは得てして「雇用の公平性を保つ」ためであり、もっと言えば「若者の雇用が圧迫されないように」という思いから来ています。
Lilacさんのエントリーでは企業変革を起こすために流動化が必要ということで論を進めています。私とは見方が違いますが、基本的には雇用流動化に賛成と言う点では意見を同じくしています。私の弱い頭で考えてみても、雇用の流動化が今のような不況から抜け出す力になるというのはわかります。
例えば流動化が起きていない今では、解雇が非常に難しいです。「今でも早期退職募集があるじゃないか」とおっしゃる人もいるでしょうが、早期退職募集と指名解雇はまったく質が異なります。次に仕掛ける事業に必要な人材が辞めてしまう恐れがあるのが早期退職募集であり、指名解雇は撤退・縮小する事業や生産性の低い人材を確実に退職させることが可能です(海外でも実際の現場はそこまでドライには行われてないでしょうけれども)。そうなると、筋肉質で高生産性な企業へと一段ステップアップする可能性が流動化にはあるのです。
だからと言って、必ずしもその新規事業が成功するかと言えばそうではないでしょう。失敗もあると思います。一企業で考えると、雇用流動化によってイノベーションが起こるか?と言われると、直接イコールで結び付けられるとは限りません。そうなると、「企業側もイノベーションを起こしていこう、新しい事業に取り組んでいこうとする」か、「今の事業を継続していこう」と考えるかは判断しかねるところです。だからこそ、流動化を声高に叫ぶなら、具体的に流動化して成功するというビジョンを、個別企業には提案していく必要があると思っています。
ただ、社会全体としてはイノベーションの数自体が増えると思います。いつでも就職可能であれば、起業する人も増えるでしょうし、筋肉質な企業も増えるでしょう。そうなれば、同じ1%の成功確率であっても、成功する絶対数が増えます。それが社会の活性化にはつながると思います。その代わり、当然格差は広がりますからそれに反発する人もでてくるでしょう。と言っても、今の日本に格差がないか?と言われると、当たり前のように存在しているわけですし、その格差は制度によって作られた格差ですから、格差が多少大きくなっても自己の能力に帰属する格差であれば、納得感は今よりも大きくなるかもしれません。
つまり、まとめますと
・雇用流動化は雇用の公平性を保つために必要
・個別企業にとって、流動化が必ずしもイノベーションにつながるかどうかはわからない
・社会全体にとっては雇用流動化が経済活性化や格差への納得間を醸成してくれる可能性がある。
というところです。
私もまだまだ勉強中の身ですから、この程度くらいしか書けませんが、城繁幸さんや池田信夫さんなんかに説明してもらったら、もっと雇用流動化で起こりうる変化を教えてくれるのかもしれません。
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この記事へのコメント:
T-レックス : 2010/03/12 (金) 23:39:18
そうなった場合、どうなるのでしょうか?
それと民主党が法人税の減税を明言しています。
企業にすればいいことかもしれないですが代わりに国民の税金が増えてしまうのか心配ですね。
松本孝行 : 2010/03/13 (土) 12:43:45
正社員の賃金が低くなることは避けられないでしょうね。雇用者報酬というのはほぼ一定で決まっているので、非正規だけを底上げできるだけの原資はありませんから、その原資を調達するために、正社員は賃下げが避けられないでしょう。
ただ、平均給与以下(年収450万くらい)は下がることはないでしょう。下がるのは800万とか当たりの給与をもらう人たちが中心になると思います。
法人税については減税の方向へ進まざるを得ないでしょう。すでに日本から多くの企業が生産拠点や研究拠点、営業所を海外へ移しています。中には本社も移しているところもあります。法人税は7割の企業が納めていない(赤字)と言われているので、減税してもそこまで大きな減収にはならないと思います。加えて減税によって企業誘致できるメリットもあるので、その当たりの計算が重要でしょう。