派遣法改正ですべてが解決するわけがない

 今回も現在議論の真っ只中にある派遣についてです。
 ここで簡単に派遣法の年表を下記します。

 1985年 派遣法成立(13業種のみに限定)
 1999年 派遣法改正(港湾・建設・警備等以外は原則派遣自由化)
 2004年 派遣法改正(製造業が解禁)


 大まかにはこの3つが大きな転換点でしょう。ちなみに1985年は中曽根内閣、1999年は小渕内閣、2004年は小泉内閣です。
 現在派遣法改正が叫ばれていますが、派遣法改正だけで現在の問題は片付くのでしょうか?例えばよく言われているのが、99年まで戻すというものです。つまり、製造業の派遣は禁止しろ!というものです。このとき、経営者はどのように判断し動くでしょうか。

 まず考えられるのが派遣労働者をすべて請負労働者に変えます。偽装請負でも話題になりましたが、請負も派遣と同じように調整が非常に簡単な業種です。1年契約で付帯事項に「経済変化によっては契約期間終了前に契約終了することがある」という項目を入れておけばいつでも雇用調整が出来ます。

 もし請負社員が使えないならば、工場をベトナムもしくはタイ・スロバキアなどの東ヨーロッパに移転します(中国は個人的にあまり好きじゃないのでパスです(笑))。日本では正社員のクビ切りが難しいため、正社員の解雇で調整が出来ません。なら、工場を移転することによって、人件費のカットを狙います。

 というように、ただ単に派遣法を改正するだけでは問題は解決しません。加えて製造業の派遣を禁止した際、一番最初に割を食うのは製造業に派遣されている派遣社員です。製造業派遣が禁止されると、正社員として企業は雇うと思っている人がいるとしたら、もう少し想像力を働かせたほうがいいでしょう。必ず派遣社員は契約終了で無職になります。段階的に禁止したとしても、彼等は失業するのです。

 また、派遣法が原則自由化されているイギリス・アメリカ・カナダ・オーストラリア・オランダなどではこのような話は一切聞きません。今回の不況でどの国も失業者が増えていますが、そのために「派遣法を改正しろ!」という声が上がっているのをニュースでも見たことがありません。おそらく、これらの国では派遣社員というのは雇用調整によって切られることがあるという意識が根付いているのでしょう。

 さらに派遣社員としてクビになっても新たな仕事を探せばいい、そのために国も自治体も民間も支援してくれるという体制が整っているのでしょう。日本では派遣社員の契約が終了した時点で企業(登録している派遣会社も!)からも再就職の支援はないですし、民間も派遣村などはめずらしいですし、自治体・国はこういった状況を救う法律がありません。あるとすれば生活保護くらいでしょうか。

 今回の派遣切りと言われる問題の本質は「再就職が難しいこと」です。派遣社員でのスキルやキャリアは認められませんし、住所がないと生活保護も受けられません。これが派遣社員として契約が早く終了したとしても、1ヶ月以内くらいに仕事の目処が付けば、こんな問題にはなりません。製造業の派遣切りが行われた一方で他の企業が派遣として雇えば、こういう問題にもならないでしょう。

 オランダでは正社員組合員の給与カットによって非正社員の雇用を維持しました。アメリカ・イギリスでは生活保護で一時的にしのいでます。日本はどうでしょうか?湯浅氏の言うようにイギリス・アメリカ型の生活保護を強くしていくべきなのか、オランダのように全体の給与カットによるワークシェアリングを行うのか、まだハッキリしていません。全体としての動きが遅すぎます。派遣村のようなボランティアも限界があります。早く打開策を講じて頂きたい。


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テーマ : 派遣社員からの脱却
ジャンル : 就職・お仕事

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ワークシェアリング オランダ

とりあえず頭を低くしてる感じですねえ 仕事分け合う「ワークシェアリング」 推進論突然浮上、労組側戸惑う 職務を定義した文書とか作る習慣の無い日本の企業では、うまくいきっこないわけです。 経営者の側もバカじゃないから、大した準備もせずにワークシェアリングな

コメント

非公開コメント

難題ですね…。

こんばんは。

派遣法改正にしろ、ワークシェアリング導入にしろ、国会議員が考えてる程、簡単ではないですね。

松本さんがおっしゃる通り、製造業を派遣対象禁止にしたら、今現在契約中の労働者は期間満了で解雇になりますね…。
ワークシェアリングにしても、労働力・労働時間・労働賃金を分け合うワケですから、お金にゆとりがあって、家族と接する時間を増やしたいと思う方以外は、反対でしょうし。(特に、住宅ローンや大学生の仕送り・学費などがある方)

もっと深く考えなければならないのは、今は、不況だ!派遣切りはいかん!と言ってますが、2025年(約15年先)の日本の労働市場は圧倒的に不足すると予想されています。
少子高齢化が邁進する日本においては、将来的な展望も踏まえて議論しないといけないと思います。

特集番組を思い出せないので、近そうなリンクを貼っておきます。
http://www.nhk.or.jp/korekara/nk02_jinko/program.html#p01

追伸…今日、ふと右側のリンクに僕のブログを見つけたのですが、
自身のブログはお気楽系で、労働問題などは記事にしておりませんが、宜しいのでしょうか? それとも、少し労働問題や社会問題も書き綴ったほうが宜しいでしょうか?

※自身のブログは、訪問者の皆さんにホッとして頂けることを目指しているつもりです。

No title

ネット上では「異義あり!」の大合唱ですね。
私の巡回するブログにおいて、ではですが。
労働規制なんてしたらこんなことになるのは自明の理なのに、何を以って根拠付けてるんでしょうね。

「そこを何とかして雇うのが企業のCSRってもんだろう」

とでも言うつもりなんでしょうか。
もうこの際さっさと

「政権交代」→「やっぱだめだった」→「政界再編」

まで行ってほしいですね。上げ潮派だけで。もちろん、セーフティネット派もいてくれなきゃ困りますが。これも城さんが言う「もうこれ以上失うものがないという状態になったときに改革は始まるだろう」という流れの一旦なんでしょうか

No title

>>♪やまっち3♪ さん
国会議員さんは耳触りのいいことしか言わないですね。特に総選挙が今年は確実にありますから、票田になる利益団体を優先して考えたりしがちです。

製造業派遣を禁止するというのはそれはそれで一つの手ではあります。そういう国もあります。が、労働規制が厳しい国ほど失業率が高く(フランス・ドイツなんてまさにそうです)、その失業に対する対策に莫大な予算が必要になります。
そのあたりも含めて考えないと「製造業派遣を禁止すればそれですべて解決」なんてことはありえないですからね。

労働市場の不足についても、使える労働力は日本にまだまだありますから(女性、壮年者、フリーターや既卒者等)、それらを活用した後に、足りない分は移民でまかなうべきでしょうね。先に日本にある資源をフルに活用すべきです。まだまだフル活用できていないですねぇ…

リンクは私のブログのような社会派ブログを集めているわけではなく、実際に交流会で出会った人のブログや趣味のブログを書いている方も混ざっています。ですので、お好きなことをブログに書いていただければ結構ですよ。

No title

>>sugarlessclipper さん
 異議ありの意見は本当に多いですよ。が、まだまだ組合系の人たちのブログや正社員の方のブログなんかを見てみると、「製造業派遣禁止ですべて解決!」という論調は多いですね。mixi等では、さらに反対派は少なくて、「よくわからん」という意見が結構多いですね(笑)まだまだ、説明が難しすぎるのかもしれません。

 政界再編になれば、それが日本の政治の始まりなりそうですね。とりあえず、古い人たちがどんどんいなくなってくれたら嬉しいですね。YKKKとかいう動きがあり、彼らは「われわれが政治の中心になる」とか言っているらしいですが、私たちの世代から言わせれば「さっさと引退してください、お願いします」とも言いたくなります(笑)

人に優しく

私は非正規雇用の労働者も含めたワークシェアの実現をのぞんでいます。
経済全体の複雑な動きなどよくわかりませんが、人間が使い捨てにされて、職も住まいも一挙に失うような制度はよくないです。
社会全体で困っている人を助けたいです。
自分の富を分けたくない、自分の生活だけ守りたいというひとは
強欲で薄情です。
富を分配した結果、経済が後退して、国力が落ちてもいいと思います。50年前の生活に戻ればいいじゃありませんか。そのほうが人間としての品格を失わずにすみます。人に優しい社会をのぞみます。
15年もすれば労働力不足になるというのであれば、なおさら、15年だけみんなで貧乏を分け合って、辛抱すればいいではありませんか。

No title

>>ちた さん
コメントありがとうございます。
みんなで貧乏になる、それも一つの方法だと思います。おそらく望む望まない関係なく、日本は経済衰退に向かっていきます。サブプライムローンが顕在化して以来、日本は四半期ベースでマイナスが続いています。去年一年で言えば、おそらくゼロ成長だったはずです。
人に優しい社会と言う意味では日本はアメリカ以下であると言えるでしょう。NPOは活発ではないですし、キリスト教会のように寝床を貸してあげるところもありません。小泉元首相が自己責任と発言した際、多くの人が共感しましたが、それは日本人の中に「利己主義」が根付いているという表れかもしれません。

製造業派遣も含めたワークシェアリング(出来ないなら、賃金シェアリングでも可)を行って欲しいと私は思っています。

>>ちた さん。

はじめまして。
それは、ナイスなお考えですね!

そうです、15年間国民全体で困難を分かち合えば良いのです。
15年後には、自然に企業がたくさん労働者を求人する時代になるんですからね。

それに加えて、経済の停滞が続いた場合、地球環境問題を考えれば、2005年京都議定書の「チーム−6%(CO2)」の目標値に近づける可能性も出てきます。

物事には全て2面性があって、全て良いことばかり・悪いことばかりとは限らないですからねw

No title

半導体企業に見切りをつけ、電気自動車関連の小さな会社に転職したんですが、この不況のため、チームマイナス6%どころか10%以上は省エネ達成できそうで、各企業も環境対策費を削ってしまい、急に会社が傾いてしまいました。(涙)
あとはオバマ大統領の緑ニューディール政策に期待です。

No title

>>野田一丁目。 さん
大変ですよね、どこも経費削減が叫ばれてます。すごいところでは、筆記用具を毎回使ったら回収するなんてところもあるそうで…
人間の産業活動が少なくなれば、おのずとCO2も減りますからこの不況は環境にはよさそうですね(笑)

No title

労働者派遣法を改善しないとなると
ほかになにか改善策があるんですか〜?

いきなりすいません。

No title

>>はる さん
 コメントありがとうございます。
 まず、派遣労働の何が問題か?を考える必要があるかと思います。すると問題点は「給与格差」と「昇進・キャリアアップ」に集約されると思います。となると、今言われている「99年時点の派遣法に戻す」という対策ではなんらこれらの問題解決につながりません。

 今最も必要な対策としては雇用の流動化が重要です。雇用の流動化というのは非正規が正規になれるようにすることです(もちろん、その逆もあります)。非正規が正規に、正規が非正規になれるようになれば、企業は能力の高い人たちだけを集めようとします。すると、企業の生産性は上がります。加えて能力による給与査定(職務給)を行えば、能力の高い人たちは高い給与を得られます。
 また、能力が低い人たちにもこれはプラスに働きます。能力が低いから解雇もしくは減給になるのですから、その足りない能力を補うことで職を得るもしくは給与が上がるようになるのです。ここは国や自治体の協力が必要です。

 今、転職活動している人たちの多くはこう感じています「どうすれば転職できるのだろう」と。つまり、転職するための要件が今はあいまいなのです。それが能力であるとすれば、その能力を高めることで転職が可能になりますから、これほどはっきりとわかりやすい制度はないと思いますよ。
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Author:松本 孝行
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